ステレオタイプとは何か?生じるプロセスや種類、影響を知る

人々は多様である

この記事の目的は「ステレオタイプの全体像を理解すること」です。

・ステレオタイプとはそもそも何か?
・ステレオタイプの代表的な種類
・ステレオタイプが人々に与える影響

を紐解きながら、自らの中にはどんなステレオタイプがあるか?を探ります。

目次

ステレオタイプとは何か?

ステレオタイプとは、「ある特定のグループに属する人々全般に対して持たれる”一般化されたイメージや概念”」のことを言います。

例えば、「日本人ははっきり意見を言わない」「男の子は青が好きで、女の子はピンクが好き」「老人はデジタルに疎い」「教師は真面目だ」など、国籍・性別・年齢・職業・宗教・人種などについて広く信じられている固定観念がそれに当たります。

ステレオタイプは個々の人間を評価するのではなく、グループ全体を評価します。そのため、個人の特性を見過ごす可能性があります。社会生活を営む上では必ずしも否定的なものではないものの、偏見や差別の根源ともなり得るということです。

そのため、一人ひとりがステレオタイプについて理解し、自分が偏見を持たないように、仮に持ったとしても識別ができるように心掛けることが求められます。

ステレオタイプはどのように生まれるか?

ステレオタイプは、人が無意識のうちに情報を処理し、分類し、理解する傾向から生じます。

例えば「男性は外で働いて、女性は家庭を守る」のような、特定のグループに属する人々への”一般的な印象”は、マスメディアや教育、親や友人との関わりなど、私たちが接し、インプットしてきた情報や経験に基づいて形成されていきます。

ここで、インプットした情報源に偏りがあるとしましょう。すると、偏ったステレオタイプが生まれる可能性があります。さらに、人間は脳内での認知処理に関するエネルギーを省くために、既に知っている情報から新しい結論を導き出す傾向があります。そのため、一度作られたステレオタイプはなかなか変えることができません。

ステレオタイプとメディア

私たちが普段触れているメディアの情報は、視聴者の意識や価値観に大きな影響を及ぼします。ここで言うメディアとは、例えば、テレビドラマやアニメのキャラクター・ストーリー、ニュース番組の報道内容、ドキュメンタリー、広告、映画など「人と情報の接合点になるもの」全てを指します。

これらが特定の人種や性別、階級、職種などの集団を一定のイメージで描写することで、視聴者に認知されステレオタイプとして定着していきます。

また、企業のマーケティング活動においてもステレオタイプが活用されることがあります。例えば、男性をターゲットにした広告であれば、「強い」「冒険的」「リーダーシップがある」などのステレオタイプを、女性向けの広告では、「美しさ」「家庭的」「思いやりがある」などのステレオタイプを用い、商品やブランドに対する共感者を増やそうとする取り組みが行われたりします。

私たちは日々、メディアから得た情報を基にステレオタイプを形成し、強化もしています。

ステレオタイプの種類

ステレオタイプは多種多様で、種類も非常に多いです。また、文化、時代、場所、社会構造によっても異なり、新しいステレオタイプが生まれることも、古いものが消えることもあります。従って、一概に何種類あると言い切ることができません。

ただし、よく知られているのは、次の6つの面で形成されるステレオタイプです。

  1. 性別に基づくステレオタイプ:男性や女性が持つべきとされる役割や特性に関する固定概念
  2. 人種や民族に基づくステレオタイプ::ある特定の人種や民族に共通するとされる特性に関する固定概念
  3. 年齢に基づくステレオタイプ::若者や高齢者など、特定の年齢層が持つとされる特性に関する固定概念
  4. 職業に関するステレオタイプ:職業別、業界別の人々の特性や性格に関する固定概念
  5. 宗教に基づくステレオタイプ: 宗教的な信念や慣習に基づく特性に関する固定概念
  6. 性的指向に関するステレオタイプ: LGBTQや、そのコミュニティに属する人々に関する固定概念

この時点で、すでに自分が持つステレオタイプに気づく方もいるはずです。それは必ずしも悪いわけではありませんが、「現実とは異なる誤認識を生むことがある」という意識は持っておきたいところです。

ステレオタイプが人々に与える影響

ステレオタイプは、とある特定のグループに対する一般化されたイメージであることから、広く受け入れられ、社会内で共有される傾向があります。しかし、時には先入観や偏見を生む原因ともなり、人々の認識や評価に大きな影響を与えています。

ここからは、ステレオタイプが人々に与える主な影響について、切り口を変えながら解説します。

影響その1:個人に対する誤解

ステレオタイプは、個々の特性や状況を考慮することなく、全体のグループに同じ特性を割り当てる傾向があります。

従って、例えば「老人はデジタルに疎い」といったステレオタイプは、年齢とデジタル技術の理解の間に必ずしも直接的な関係がないにも関わらず、年を重ねた人々の能力を過小評価する可能性をはらんでいます。

また「母親が子育てを率先すべき」というステレオタイプを母親本人が持っていた場合、家族間で丁寧に協議が行われないまま、母親が仕事を制限する選択を取る可能性もあります。

上記の例から分かることは、「ステレオタイプが個人の適切な評価や行動を阻害する場合がある」ということです。ステレオタイプによる誤解は、社会の構成員がパフォーマンスを最大限に発揮したり、自己実現に向けて挑戦することを妨げる可能性があります。

影響その2:偏見

偏見とは、事実を無視して一方的な意見や観念を持つことを指しますが、ステレオタイプは偏見の形成に密接に関わっています。

人は脳内で情報を効率的に処理するために、無意識のうちに「カテゴリー化」を行います。それがステレオタイプを生み出す原因となります。

ここでもし、偏った情報に基づいて情報処理や判断が行われたとしましょう。例えば、「若者は経験値が低いから、仕事の能力も低いだろう」などといったようにです。するとそれは「偏見」となり、一部の集団や個人に対する不平等へとつながっていきます。

つまり、偏見とステレオタイプは連鎖的な関係にあり、一方が生まれると他方も必然的に生まれるのです。

影響その3:コミュニケーションの質の低下

人は脳のリソースをなるべく温存するために、無意識のうちにステレオタイプを基に判断を行っています。これは、ステレオタイプが人間が膨大な情報の中から適切な判断を速やかに下すための一つの道具である反面、コミュニケーションの障害となることも示しています。

例えば「女性は論理的ではない」というステレオタイプを持つ人がいたとして、それが強固な固定観念だった場合、ステレオタイプを持つ本人は、女性という集団や個人を「理解したという誤った印象」を得ている可能性があります。

結果、自分の観念や意見が正しいと信じ込み、他者の視点や意見を無視したり、それを受け入れることなく拒絶する可能性が高まります。こうした過剰に偏りのあるステレオタイプから交わされるコミュニケーションは、人間関係や社会に対する悪影響を生む原因となります。

特に、国や文化、世代、性別といった様々な背景を持つ人たちとのコミュニケーションでは、ステレオタイプが間違った理解を生む可能性が高いです。表面的な情報にとらわれず、個人が持つ特性に目を向けることの重要性が伺えます。

私たちはステレオタイプとどう付き合っていくのが良いのか?

ステレオタイプは、もはや自動生成されると言っても過言ではありません。従って、忌み嫌ったり避けたりしたところで本質的な解決にはならないでしょう。また、ステレオタイプが人が素早く判断を下すために一役買っているというプラスの面も忘れてはなりません。

私たちがステレオタイプと上手に付き合っていくためには、まずは「自分自身がどんなステレオタイプを持っているのか?」見つめ直すことが重要です。そして、それらが「本当に実情に当てはまった観念なのか?」自問自答することも大切です。

もしかしたら、自問自答の末に、ただ一つの解は見つからないかもしれません。しかし、問いを投げ続けることが自身を理解することにつながり、ひいては他者理解へとつながっていきます。

「目の前の相手はこういうステレオタイプで一括りにできるが、個人として見たときにはどのような素晴らしい特性を持っているのか?」

こういった視点で相手の背景や環境について理解を深めることで、ステレオタイプによって生まれる溝は少しずつ浅くなっていきます。

この「少しずつ」というのがポイントで、個人レベルから社会レベルまで、継続的な意識と努力によって、ようやくステレオタイプを超えた本質的な他者との関わり方が可能になります。そしておそらくその先には、新たなステレオタイプも生まれることでしょう。

私たちは、常に観念と共に生きているのです。

ステレオタイプに”気づく”には、他者との関わりが不可欠です。その過程では、自らのステレオタイプで相手を傷つけることもあれば、相手の持つステレオタイプで自分が傷つくこともあります。

その連綿と続く活動を「攻撃」と捉えれば戦になりますし、「学び合い」と捉えれば共存社会ができます。ステレオタイプは人を認知判断するためのただの道具であり、それをどう使うか?は私たちに委ねられているのです。

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